その他のフランス映画 1919年

 著名な劇作家のトリスタン・ベルナールと協力しながら映画を製作していたジャック・フェデーは、「綴りの誤り」(1919)という作品を監督している。綴りを誤った事務員が、直すために会社に忍び込むという内容の作品である。この作品は、フェデーとベルナールの最後の共作となり、撮影後にフェデーは所属していたゴーモン社を去ることとなる。

 アンリ・プークタルはエミール・ゾラ原作の「労働」(1919)を監督している。ジョルジュ・サドゥールは「労働」をプークタルの最高傑作と評している。

 ジャック・バロンセリは、アメリカの俳優ファニー・ウォード、レックス・マクドゥーガル主演で「ローン・スターの秘密」(1919)を監督している。この作品は、フィルム・ダール社がアメリカの映画市場で利益を得ようとして製作された。バロンセリは他にも、「ラムンチョ」(1919)を監督している。

 俳優から監督に転身したレーモン・ベルナールは、「小さなカフェ」(1919)を監督している。マックス・ランデーが主演し、生き生きとカフェのギャルソン役を演じたという。演出はあまり個性がなかったが、国際的に成功を収めたといわれている。

 ルイ・フイヤードは、犯罪ものの最後の連続映画「バラバス」(1919)を監督している。「バラバス」では、これまで連続映画に登場するどの悪役よりも情け容赦のない悪漢が登場した。ガストン・ミシェルが変装をしないで堂々と悪事を働く悪漢を演じて、スターとなったという。

 また、戦時中ということから1916年に暫定的に始まった検閲は、戦争が終わった後も政令により、続けられている。

 リヨンではすべての映画で不燃性フィルムを使わなくてはならないという条例が発布されている。

映画映像史―ムーヴィング・イメージの軌跡

映画映像史―ムーヴィング・イメージの軌跡