ドイツ エルンスト・ルビッチの史劇について

 岡田晋は「ドイツ映画史」の中で、ルビッチの史劇が、歴史と現実のコントラストを通して、ドイツ映画の精神的状況を浮き彫りにしていると指摘している。当時のドイツ国内には、敗戦による政治的混乱、社会的不安が見られたが、そういった要素を映画に反映させ、思想的にも様式的にも他国にはない独自性を得たという。

 また、ルビッチの演出方法、ひいてはドイツ人の演出方法についても、次のように述べている。

「ルビッチュの演出手法は、師匠のラインハルトが舞台で試みた群集劇の手法−造形的な巨大セットとダイナミックな照明効果を駆使し、群衆を一大パレードのようにみごとに動かす大劇場の方式によっている」

「ドイツ人はもともと、集団を演出する才能、集団として演技する才能に秀でている。のちにヒトラーが好んでくりひろげた分列行進、巨大セットによる祭典は、このような映画のスペクタクルと無縁ではない」