映画評「勇士の血」

製作国アメリカ 原題「THE GIRL WHO STAYED AT HOME」
D・W・グリフィス・プロダクションズ製作 パラマウント・ピクチャーズ配給
監督・製作・脚本D・W・グリフィス 脚本スタナー・E・V・テイラー 撮影G・W・ビッツァー 編集ジェームズ・スミス
出演アドルフ・レスティナ、キャロル・デンプスター、リチャード・バーセルメス、ロバート・ハロン、クラリン・セイモアー

 南北戦争時に南軍に従軍し、敗戦を認められずにフランスに逃れた男も今は年老い、孫娘と暮らしていた。第一次大戦が勃発。孫娘を愛するようになっていたアメリカ人ラルフは従軍してフランスへ。ラルフの兄ジェームズも、愛する女性をおいて従軍する。

 「世界の心」(1918)と同様にプロパガンダ色が垣間見えるものの、すでに第一次大戦終戦していたこともあり、母親を思うドイツ兵を登場させるなど、プロパガンダ一色の作品ではない。また、南軍の敗北を認められず、今のアメリカの存在を認められない老人(南軍の旗を掲げ、「私はたった1人のアメリカ連合国民だ」と自分を紹介する)が、フランスを助けるためにやって来たアメリカ軍を見て、現在のアメリカを認めるという、「國民の創生」(1915)で南北戦争を思い切り描いたグリフィスらしさが見られる作品でもある。

 グリフィス作品を支え続けたリリアン・ギッシュは出演しておらず、代わりに当時まだ17歳だったデンプスターが孫娘役で出演している。だが、デンプスターの演技がいまいちなためか、出演時間は限られている。光っているのはハロン演じるジェームズとセイモアー演じる恋人の2人だが、あくまで脇役としての輝きだ。デンプスターの相手役なので、バーセルメスの出演時間も少ない。今のアメリカを認められない老人も、最後の見せ場以外にはやはりメインとはいえない。

 誰が主役なのか分からず、映画の主眼がぼやけてしまっているのが、「勇士の血」の特徴だ。かといって、群像劇としての魅力や、断片が総合されることで戦争自体を描き出そうというタイプの作品ではない。何とも中途半端な作品となっているように感じられた。

 もしギッシュがデンプスターの役を演じていたら、出番は少なくとも印象に残るシーンとなり、映画も引き締まったのだろうか。もしくは、映画の構成自体が変わって、ギッシュ=バーセルメスの「散り行く花」(1919)コンビによる物語となっていたのだろうか。そんなことを考えさせられる作品だった。