映画評「想出の丘へ」

 原題「HEART O’THE HILLS」 製作国アメリ
 メアリー・ピックフォード・カンパニー製作 ファースト・ナショナル・エキジビターズ・サーキット配給
 監督ジョセフ・ド・グラス、シドニー・フランクリン 製作総指揮・出演メアリー・ピックフォード

 山に住む少女メイビスは、父親を射殺した犯人への復讐を胸に誓っている。メイビスはジェイソンと恋仲だが、13歳のため結婚できない。ある日、メイビスは殺人容疑をかけられるが、容疑は晴れる。6年後、成長したメイビスは父親を殺した犯人を見つける。

 ピックフォードといえば、無垢な少女役で知られている。しかし、この作品でピックフォードが演じるのは、父親の復讐を胸に秘めた少女という、決して無垢とは言えない役柄だ。ストーリーも、殺人や児童虐待といった要素が絡み、ピックフォードの映画のイメージとは離れている。母親に虐待された傷を見せるためとはいえ、肩を出すというセックス・アピールを感じさせるシーンまである。また、全体の4分の1は19歳に成長した役である。

 ストーリーや役柄に、イメージとは異なる暗さや性的な部分があるとはいえ、それは全体の印象には影響を与えていない。山を舞台にした牧歌的な雰囲気、気のいい山の男たちが、映画に明るい印象を与えている。

 ピックフォードは、自身に期待されている明るいイメージを維持しながら、小さい冒険をしているように思える。少女役ばかりだったピックフォードは、大人の女性役を演じたいと思っていたといわれている。この作品からは、そうした自己の願望と、スターとして期待される役割の間でのきしみが聞こえてくるようだ。