映画評「一日の行楽」

 原題「SUNNYSIDE」 製作国アメリ
 製作ファースト・ナショナル・ピクチャーズ 配給ファースト・ナショナル・イクジビターズ・サーキット
 監督・脚本・出演・編集チャールズ・チャップリン

 「一日の行楽」は、ファーストナショナル社に移籍したチャップリンの第4作目となる作品である。前年に「担え銃」という大作を完成させたチャップリンだが、ファースト・ナショナル社の希望は時間をかけて大作を作るよりは、ミューチュアル社以前のようにチャップリン流のドタバタ短編喜劇をつくって欲しいというものだった。当時のチャップリンの人気は世界的にも高まり、はっきりいってどんな作品でもヒットは確実だったからだ。

 「一日の行楽」はそんな会社側の希望を汲んで作られた作品だと思われる。「担え銃」のような特殊なセットは組まれず、撮影はロケで行われている(一部はチャップリンのスタジオ内で行われている)。チャップリンは力を抜いて、ミューチュアル社以前の作品のような、チャップリン流のおもしろい短編の製作に終始している。

 その証拠の1つに、オープニングのギャグ(車のエンジンがなかなかかからない)に、スタジオの従業員と思われる人物が偶然映りこんでしまっている。当時、すでに完全主義者になりつつあったチャップリンが、力を入れて撮影したのならば、そんなミスは許さなかったはずだ。

 おもしろいギャグはいくつかある。例えば、遊覧船にある折り畳み式のチェアを組み立てようとするが、全然うまくいかないギャグ。また例えば、道にばら撒かれたコール・タールに足をとられた体を前に傾けたり、後ろに傾けたりするギャグ。チャップリンが、「ちょっとおもしろい短編喜劇」を簡単に作れることを「一日の行楽」は証明している。

 ちなみに、後にトーキーとして製作されるローレル&ハーディのコメディに、同じような作品があるという。