映画評「蛟龍を描く人」

 原題「THE DRAGON PAINTER」 製作国アメリ
 ハワース・ピクチャーズ・コーポレーション製作 
 ロバートソン=コール・ディストリビューティング・コーポレーション、エキジビターズ・ミューチュアル・ディストリービューティング・カンパニー配給
 監督ウィリアム・ワーシントン 原作メアリー・マクニール・フェノロサ 出演 早川雪洲 青木鶴子

 山奥に住むタツは、まだ見ぬ姫を追い求めて、絵を描き続けていた。タツの絵を見た測量士は、後継者に悩む日本画の重鎮カノウにタツを紹介する。カノウはタツの絵に惚れる一方で、タツはカノウの娘であるウメコに姫の姿を見る。

 製作会社のハワース・ピクチャーズは、早川雪洲が立ち上げた会社である。日本を舞台にした作品は当時のハリウッドでは珍しく、早川の製作会社ならではの作品と言えるだろう。カリフォルニアのヨセミテ国立公園を箱根に見立てて行われた撮影は、日本人ならば違和感があるだろう(特に山)。しかし、日本を良く知らない外国人にとっては、オリエンタルな雰囲気に溢れた、エキゾチックな映像として映ったことだろう。

 原作は日本美術の専門家だったメアリー・マクニール・フェノロサによる。近代になった後の日本画の衰退からヒントを得て書かれたという原作だが、映画ではそれよりもタツの型破りさと、ウメコの献身的な愛に焦点が当てられている。

 内容的には平凡的なメロドラマといってしまっていいと思う。そこに、日本という味付けをすることによって、外国人にとってはエキゾチックで魅力的な作品になっている。海外の映画評を読むと、日本よりも評価が高いのもそのためだろう。

 早川雪洲がハリウッドのトップ・スターになったのも、外国人が持っている日本に対するエキゾチックな視線をうまく生かしたからだと思われる。「蛟龍を描く人」もそんな作品の1つだ。