映画評「SOUTH」

 製作国イギリス 製作ラルフ・ミンデン・フィルム
 監督・撮影フランク・ハーレー

 イギリスの探検家アーネスト・シャックルトンが南極探検を行った様子を撮影したドキュメンタリー。この探検は、途中で氷河に囲まれた船が動けなくなり、徒歩とボートで救助を求めるという厳しいものとなり、このときのシャックルトンのリーダーシップは高く称えられたという。

 出来事自体が大きく、しかも当事者の1人が撮影した映像は、ただそれだけで大きな力を持っている。一緒に乗る犬の紹介といったほのぼのとした雰囲気を漂わせて始まる映像は、途中から雰囲気が変わる。決して大げさに、「大変なことが起きた!」と叫ぶのではないが、映像から徐々に高まる不穏な空気が伝わってくるようだ。

 出来事の大きさにのみ依存するのではなく、ハーレーの映像は時に信じられないほどの美しさを見せる。氷河に囲まれた船という被写体を、あれほど美しく見せるのは、当事者だからこそ許されることかもしれない。

 後半は、ペンギンやアザラシといった南極圏に住む動物たちのかわいらしい映像も織り交ぜられ、見る者の興味を逸らすことなく最後まで見せてくれる。

 「事実は小説より奇なり」という。この映画の悪魔的ともいえる美しさは、ストーリーだけではなく、映像においても、事実の持つ強さを感じさせる作品である。