その他のアメリカ映画 1920年

 かつて1巻物のコメディを製作して一斉を風靡したマック・セネットは、長編コメディである「野良に出て」「結婚生活」(1920)を製作している。

 トマス・H・インスの元で育ち、パラマウントの監督なったフランク・ボーゼージは「ユーモレスク」(1920)を監督し、成功を収めている。戦傷で再起不能と思われた青年ヴァイオリニストが、母の愛で奇跡的に回復する物語を情感豊かに描いた作品である。

 エーリッヒ・フォン・シュトロハイムは、「悪魔の合鍵」(1920)を監督している。ヨーロッパに住んでいるアメリカ人女性が主人公の、夫に不満を持つ彼女のセックス、誘惑、陰謀の物語だった。「アルプス颪」(1919)と同様のテーマで、アメリカ的な気質とはまるでちがう鋭くシニックな描写が光ったという。

 フランク・ロイドは「マダムX」(1920)を監督している。ポーリン・フレデリックが大熱演し、「滝の白糸」の西洋版とも言える作品である。

 ハリー・ミラード監督の「オーヴァー・ゼ・ヒル」(1920)は、親孝行な末の息子ジョニー・ウォーカーが、無情な兄を母のいる養老院へと引きずっていく場面が有名な作品で、多くの涙を誘った。

 「イソベル」(1920)は、プロローグに7色の写真による雪景色が添えられており、日本では「七色プリズモ天然色入り」と宣伝されたという。

 ジョージ・メルフォード監督の「海の狼」(1920)は、流行し始めた海洋劇のひとつである。

 この頃、有名なスポーツ選手が映画に登場するようになっていた。この年には、ボクシング界から、連続活劇「深夜の人」(1919)に出演したジム・コーベットに続いて、ジャック・デンプシーが連続活劇「剛勇ジャック」(1920)に出演している。

 ウィル・ロジャーズは、クラレンス・バジャー監督とのコンビで「金鉄の響」(1920)などに出演。ユーモラスな個性と演技を発揮したという。

 お色気と得意なダンスで甘美な魅力を振り巻いたメイ・マレーは、甘美な画調が特徴的なジョージ・フィッツモーリス監督と組み、「踊り狂ひて」(1920)などに出演し、人気を高めた。