フランス印象主義派の活躍

 ルイ・デリュックが提唱したフォトジェニー論に影響を受けた1920年代のフランス映画のことを総称して、フランス印象主義という。より具体的には、アベル・ガンス、マルセル・レルビエ、ジェルメーヌ・デュラック、ジャン・エプスタンといった人々による作品のことを指し、フランス印象主義派と呼ばれる。

 印象主義派の1人であるマルセル・レルビエは、バルザックの原作を現代に置き換えた「海の人」(1920)を監督している。ジャック・カトラン演じる漁村青年が不良となり、父や婚約者を悲しませるというストーリーだった。レルビエは海が主役であると考え、焦点距離の深いレンズを使用して海を捉えた。安酒場のシーンではリアリズムが感じられたという。レルビエは、自分の映画が完全な条件のもとで上映されることを望み、シークエンスごとに映写の速度を指定した「リズム・カード」を添えたという。そんな「海の人」は、検閲によっていくらかカットされたものの、観客にも、美しい映像を望んだゴーモン社にも歓迎されたと言われている。