その他のドイツ映画界の状況 1920年

 
 ウーファを中心に発展していたドイツ映画界は、1920年には中央ヨーロッパ、イギリス、アジア、アメリカと緊密な連携を図っていた。ドイツ、オーストリアポーランド、トルコ、ブルガリアでのパラマウントの配給権を入手していたのもウーファだった。

 一方で、ドイツの映画興行はアメリカ映画の輸入に押されていた。そのため、プロデューサーたちはアメリカ映の上映禁止をするように政府に嘆願を行っている。

 F・W・ムルナウ監督の「ジキル博士とハイド氏」(1920)は、ロバート・スティーブンソンの同名原作の映画化であり、「カリガリ博士」(1920)でツェザーレを演じたコンラート・ファイトが主演している。脚本も「カリガリ博士」のハンス・ヤノウィッツが担当している。またムルナウは、「せむし男と踊り子」(1920)も監督。こちらの脚本も「カリガリ博士」のカール・マイヤーが担当している。

 エルンスト・ルビッチは「寵姫ズムルン」「デセプション」「白黒姉妹」(1920)などを監督している。

 「寵姫ズムルン」は、千一夜物語の1話の映画化で、美姫ズムルンと2人の踊り子をめぐって展開される男たちの愛欲、嫉妬、恋愛の物語である。主演はポーラ・ネグリパウル・ヴェゲナーだった。

 「デセプション」は、「パッション」(1919)のような史劇である。ヘンリー八世時代のイギリスを舞台に、恋と陰謀に彩られたアン・ブリーンの生涯を描いた。