映画評「青春の夢」

 原題「POLLYANNA」 製作国アメリ
 メアリー・ピックフォード・カンパニー製作 ユナイテッド・アーティスツ配給
 監督・製作ポール・パウエル 原作エレノア・H・ポーター 脚色フランシス・マリオン
 撮影チャールズ・ロシャー 製作・出演メアリー・ピックフォード

 父親を失ったポリアンナは、意地悪な叔母に預けられる。ポリアンナは、いろんなことに「よかった(glad)」を見つけ出して、周りの人々を明るくさせていく。だが、交通事故に遭ったポリアンナの足は動かなくなってしまう。

 1913年に出版されて大ヒットとなったエレナ・ホグマンの原作の映画化である。当時のピックフォードは大人役への脱皮に苦しんでいたといわれるが、「青春の夢」では開き直ったかのように、多くの人々の人気を得た少女役を演じている。とはいえ、ピックフォードはとても嫌がっていたと、脚色を担当したフランシス・マリオンは述べている。

 ストーリーは原作をなぞるように進むが、ダイジェストを見ているような性急さがある。周りの人々は、みんなすぐにポリアンナの明るさに惚れこんでしまう。そこにはドラマはない。だが、当時の観客はドラマを求めていたわけではなく、明るいポリアンナ=ピックフォードを見たかったのだろうから、これでよいのだろう。ピックフォードもその辺を心得ているのだと思われる。このあたりに、ピックフォードが大衆的な人気を集めた理由があるのだろう。

 病気で落ち込む女性を励ますために、眼が見えない男性と、耳が聞こえない女性を連れてきて、「あぁ、私は眼が見え、耳が聞こえて良かった」と思わせる展開はどうかとも思うが、あまり突っ込まないでおこう。

 ちょっと嫌らしい見方をすると、足が動かなくなったポリアンナは、少女役を演じるのに疲れたピックフォードと重なる。ポリアンナが立ち上がるのを町の人々が望むように、ピックフォードが少女役を演じるのを当時の人々は待ち望んでいたことだろう。ポリアンナは立ち上がる。そして、ピックフォードも人々が求める少女役を演じていく。2人の間の違いは1つだけ。ポリアンナは喜んで立ち上がるが、ピックフォードは嫌々立ち上がる。