映画評「NOMADS OF THE NORTH」

 製作国アメリ
 ジェームズ・オリヴァー・カーウッド・プロダクションズ製作
 アソシエイテッド・ファースト・ナショナル・ピクチャーズ配給
 監督・脚本デイヴィッド・ハートフォード 製作・原作ジェームズ・オリヴァー・カーウッド 製作ハル・ローチ
 出演ロン・チェイニー

 美しい娘のナネットは、地主の息子ダンカンや伍長のオコーナーに愛を退け、北の山奥に働きに出かけたラオールの帰りを待っている。ついに帰ってきたラオールとナネットは結婚するが、ラオールは喧嘩の末にダンカンの友人を殺してしまう。2人は、かつてラオールが住んでいた北の山奥に逃げる。

 ロン・チェイニーと言えば、様々なメイクアップによって数々の役柄をこなした、「千の顔を持つ男」の異名を持つ俳優である。だが、この作品におけるチェイニーは、1つの役柄を非常にストレートに演じている。その意味で、チェイニーの演技を期待して見ると、失望を覚えるかもしれない。

 自らの名前をつけた製作会社で製作されていることから、この作品は原作のジェームズ・オリヴァー・カーウッドが力を入れて作られた作品であろうと思われる。カーウッドは、自然を扱った小説を多く残した人物で、この作品にも、小熊の描写に力が入れられている(少ししつこいくらいだが)。さらには、オコーナーが逮捕されると大雨が降ったり、山火事が起こったりと、まるで自然と共に生きるオコーナーを守るために、自然が人間に牙を向くかのような展開となっている。とはいえ、基本はメロドラマで、カーウッドが追求したと思われるテーマは掘り下げられているとは言えない。そして、メロドラマとしてみると、ありきたりと言ってしまっていいだろう。

 最大の見所は、山火事のシーンだろう。このシーンでは、チェイニーを含めて3人の役者が火傷を負って、撮影が中断されたのだという。それだけあって、リアリティのある山火事となっている。