映画評「天罰」

 原題「THE PENALTY」 製作国アメリ
 ゴールドウィン・ピクチャーズ製作 ゴールドウィン・ディストリビューティング配給
 監督ウォーレス・ワースリー 出演ロン・チャニー

 子供の頃に事故で両足を失ったブリザードは、今ではサンフランシスコの暗黒街のリーダーとなっている。ブリザードは自分の足を手術した医者を恨んでおり、復讐のために医者の娘に近づく。

 小説が原作で、タイトルにあるとおりに、医者に天罰を与えようとするブリザードに、最後には天罰が下るという、因果応報なテーマはある。だが、この映画の魅力は何といっても、ロン・チャニーに尽きる。

 両足を失ったブリザードの役柄を、膝から下を後ろに縛り付けて演じたというチャニーの演技は、「千の顔を持つ男」の異名に恥じぬものだ。あまりの痛みに数分しか縛り付けていられなかったというから、その役者魂には恐れ入る。

 チャニーの演技がなければ、この作品のリアリティは半減してしまうことだろう。復讐をしようと近づく医者の娘が、チャニーを悪魔サタンのモデルとしたり、サンフランシスコの街を実力行使で自分のものにしようとしたりといった設定は、一歩間違えばコメディになってしまう。それを踏みとどまらせているのが、チャニーの演技だ。両足を失った演技にばかり目が行きがちだが、表情の豊かさを忘れてはならない。時には紳士的な、時に悪魔のようなチャニーの表情が、キャラクターに肉付きを与えている。

 1920年代の演技派といえば、チャニーに尽きると言われる。1920年に公開されたこの作品は、そんなチャニーの1920年代の幕開けにふさわしい素晴らしい演技を見せてくれる。