映画評「盗まれた瞬間」

 原題「STOLEN MOMENT」 製作国アメリ
 アメリカン・シネマ・コーポレーション製作
 監督ジェームズ・ヴィンセント 出演マーガレット・ナマラ ルドルフ・ヴァレンティノ

 若き女性ヴェラは、ブラジルからやってきた小説家のホセに恋をするが、ホセに結婚する気がないことを知り、別れる。数年後、別の男性と結婚したヴェラの前に、ホセが再び姿を現す。ある日、ホセは何者かによって殺害され、ヴェラは自分とホセの過去を知られることを恐れる。

 この作品は、もともとオペラのスターだったマーガレット・ナマラを主演にして作られた作品であり、ヴァレンティノは脇役(それも悪役)である。ヴァレンティノが「黙示録の四騎士」(1921)に出演してスターになった後、再編集して時間を短くし、ヴァレンティノがより目立つように構成されて再公開された。その再公開バージョンの完全版は残っておらず(オリジナルも残っていない)、私が見ることができたのは再公開バージョンの短縮版である。

 ストーリーはありきたりなメロドラマであり、演技も演出もこれといった見所はない。ヴァレンティノは口髭を生やして、スターとなった後の作品と比べると年齢が上に見える。トレードマークともいえる、見事なオールバックは見ることができるが、あまり魅力的には感じられなかった。ただ、外国(ブラジル)からやって来たラテン系のセクシーな男という、後のヴァレンティノも演じる設定に通じるものがある点は、指摘しておきたい。