映画評「HEADIN’ HOME」

 製作国アメリカ ケッセル・アンド・ボウマン製作
 ヤンキー・フォト、ステイツ・ライツ・インディペンデント・エクスチェンジス配給
 出演ベーブ・ルース

 田舎町に住むベーブ・ルースが、メジャー・リーグの選手たちが街にやって来たときに行われた試合に参加し、見事な打撃を披露して、メジャーの選手になるまでを描いた作品。

 一応伝記映画のような体裁になっているものの、かなり違うらしい。小さな田舎町出身になっているが、ルースは大都市のボルティモア出身である。家族思いの好青年として描かれているが、かなりの不良少年だったといわれる。また、1920年当時はピッチャーとしても活躍していたが、そのことには触れられていない。

 という部分は、決して映画の価値を損なうものではないだろう。当時ベーブ・ルースは大衆を呼んでおり、その人気にあやかって作られた作品であるということから、当時の映画とアメリカ文化の交わりを感じ取る方が素直な反応というものだ。ここにあるのは伝説であり、映画として面白いとか、事実に基づいているとかいった要素は伝説の前では無意味だ。

 ちなみに、1919年にホワイトソックスの選手8人が八百長に関与したために球界を追放された「ブラックソックス事件」が起き、メジャー・リーグは危機に陥っていた。それを救ったのが、ベーブ・ルースの人気だったとも言われる。皮肉なことに、ブラック・ソックス事件に関わっていたギャンブラーのアーノルド・ロススタインが、この映画の製作資金の一部を出資しているのだという。