映画評「ロイドの何番々々」
原題「NUMBER, PLEASE?」 製作国アメリカ
ローリン・フィルムス製作 パテ・エクスチェンジ配給
製作・監督ハル・ローチ 監督フレッド・ニューメイヤー 出演ハロルド・ロイド、ミルドレッド・デイヴィス
ロイドは遊園地でミルドレッドに一目ぼれする。だが、ミルドレッドにはボーイフレンドがいる。ロイドはミルドレッドと気球に乗る許可を得るために、公衆電話からミルドレッドの母親に電話しようとするが、トラブルばかり。しかも、ハンドバッグを盗んだと思われて、警官にまで追われることになる。
オープニングが異色だ。恋に破れた男が船に乗っている。シルエットで映し出された男の姿は渋い。そして、男は心の傷を癒すためにギャンブルに走る。この短いシークエンスは、まるでセシル・B・デミルかと思わせる。だが、画面は一転してジェット・コースターに乗るロイドの姿に。映画の中の上流階級のように、金を使って格好良く心の傷を癒すことができないロイドの登場だ。一気に親近感が湧いてくる構成が見事だ。しかも、続いてのギャグがいい。最後尾に乗っているロイドに、前の乗客が被っていた帽子が次々と飛んできてぶつかる。これだけではそれほど面白くないが、しまいにはカツラまで飛んでくるのだ!
この後長篇で爆発的な人気を得るロイドが、単純なスラップスティックから構成まで工夫を凝らしていく過程が、この作品を見ると分かる。
正直言って、この後の流れはありきたりと言ってしまってもいい。電話ボックスという当時の最新の舞台を使ったり、湾曲したミラーを使って様々な形に映る自分を見てロイドが驚いたりと、工夫が凝らされてはいる。見ていて飽きることはないが、驚きもあまりない。だが、ラストがいい。ふたたび失恋したロイドは、汽車に乗っている。激しく鳴る汽笛。だが、それは遊園地の中を走るミニチュアの汽車である。
- 出版社/メーカー: ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
- 発売日: 2008/11/13
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