映画評「目が廻る」

 原題「HIGH AND DIZZY」 製作国アメリ
 ローリン・フィルム製作 パテ・エクスチェンジ配給
 製作・監督ハル・ローチ 出演ハロルド・ロイド

 医者のロイドは、友人と密造酒を飲みグテングテンに。道で警官に目をつけられたり、ホテルでドタバタを巻き起こしたりする。部屋に戻ったロイドは、夢遊病の女性が高い階にもかかわらず窓の外を歩いているのを見て、窓から外に出て追いかけていく。

 禁酒法アメリカ全土で施行されたのは1920年からであり、タイムリーに密造酒を扱っているとも言える。一方で、映画で密造酒を登場させることができるくらい、密造酒が作られていたということなのかもしれない。

 ギャグとしては酔いどれを演じていたキーストンやエッサネイ時代のチャールズ・チャップリン映画を思わせる。また、ロイドの友人役の役者はロスコー・アーバックルに少し似ており、キーストン時代のチャップリン=アーバックル共演作を思い出させる。ただ、酔っ払いギャグとしては平凡だ。

 最大の見所は、高層階の窓の外に出たロイドが落ちそうになるスリルだろう。後に「要心無用」(1923)でも見せてくれる特殊効果を使っての撮影と思われる。実際には落ちる危険はないと分かっていてもドキドキさせられた。

 正直そこそこ面白かったというところだが、後年長篇で開花する工夫の一端が垣間見える作品である。