映画評「ロイドの神出鬼没」
原題「GET OUT AND GET UNDER」 製作国アメリカ
ローリン・フィルム製作 パテ・エクスチェンジ配給
製作・監督ハル・ローチ 出演ハロルド・ロイド、ミルドレッド・デイヴィス
アマチュア劇団に所属するロイドは、恋人で共演者でもあるミルドレッドの電話で起こされ、遅刻しそうなことを知る。ロイドは急いで車に乗って劇場に向かうが、途中で様々なトラブルに遭う。
ストーリーは、はっきりいって関係がない。車を使ってのトラブルにまつわるギャグを次から次へと見せてくれるのが、この映画の最大の魅力だ。バイクの警官とのチェイスといった他のコメデ作品にもよく見られるギャグに加えて、この作品で初めて見たようなギャグも多く見られる。例えば、直すためにボンネットの中に身を乗り出したロイドが、どんどんボンネットの中に入ってしまい、最後にはほぼ全身が入ってしまうといったギャグだ。
三大喜劇王と並び称されるチャールズ・チャップリンやバスター・キートンほどではないが、高い身体性も見せてくれる。車から落ちたカバンを拾うために、ロイドは走ったままの車から飛び降りてカバンを拾い、車を走って追いかけて飛び乗るといったシーンがそれだ。
驚いたのは、麻薬(コカイン?)を注射して元気になる男性を見て、その男性から注射器を奪い、調子の悪い車に注射すると勢いよく車が走り出してしまうというギャグだ。このシュールさやブラックさは同時期の他の作品と比較してもトップクラスなのではないだろうか。この後、プロダクション・コードが導入されるハリウッド映画では、これほど直接的な麻薬の描写は許されなくなる。
オープニングはロイドの夢のシーンから始まる。好きな女性が他の男と結婚することを知ったロイドが、慌てて部屋を飛び出して、車の往来を走っていくシーンが面白い。通りを勢いよく走っていくロイドの様子を鳥瞰で撮影したカメラ・アングルに負う部分が大きいように感じられる。監督はハル・ローチである。このシーンには、同時期のチャップリンやキートンにはない演出による面白さを生み出しているように感じられた。
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