映画評「寵姫ズムルン」

 原題「SUMURUN」 製作国ドイツ
 パーグ製作 監督・脚色・出演エルンスト・ルビッチ 出演ポーラ・ネグリ

 アラブのある国を舞台に、酋長、姫、酋長の息子、ジプシーの踊り子やせむし男、行商人などによる恋の鞘当てが繰り広げられる。

 「アラビアン・ナイト」の中の1エピソードを舞台劇として演じられたものを、映画化した作品。ルビッチは1910年の舞台劇でも演じたせむし男の役を演じている。また、ポーラ・ネグリは舞台劇のポーランド版でズムルンを演じたという、ルビッチやネグリにとっては縁の深い作品である。

 この頃のルビッチは、コメディや史劇などを監督し、ヒット・メイカーとして活躍していた。この作品も、すでにヒットしていた舞台劇を元にした作品であり、当時としては露出度の高い踊り子たちが常に登場しセックス・アピールも放ち、ヒットする要素満点の作品である。

 ルビッチといえば、「ルビッチ・タッチ」と言われた洗練された映像表現で知られているが、この作品での映像表現はそれほど洗練されているようには感じられない。多くの登場人物が絡み合う複雑なストーリー展開の面白さに支えられている部分が大きいようにも思える。その点では、少し物足りなさを感じた。