映画評「エロティコン」

 原題「EROTIKON」 製作国スウェーデン
 スヴェンスカ・フィルムインダストリ製作 監督・脚本モーリッツ・スティルレル

 昆虫学者の妻アイリーンは、男爵のフェリックスと浮気をしている。当の昆虫学者は、妻よりも姪をかわいがっている。また、昆虫学者の友人である彫刻家も、アイリーンに気がある。ある日、アイリーンは昆虫学者の夫に浮気をしていることを告白するも、彫刻家が間に入り元の鞘に戻そうとするのだが・・・

 スティルレルと言えば、ヴィクトル・シェーストレームと並んで、サイレント期のスウェーデンを代表する監督である。また、グレタ・ガルボを発見した人物としても知られている。だが、スティルレルが監督した作品は、あまり見る機会がない。この作品は、見ることができた数少ないスティルレル作品の1つである。

 正直に言って、あまり面白いとは思わなかった。その最大の要因は、平凡な演出にあるように思える。着実といえば着実なのだが、これといった特徴を見出すことができなかった。

 この作品が評価されているのは、ストーリーとテーマにある。妻の浮気を決して暗く描かずに、あくまでも恋愛遊戯の対象として描いているかのような軽さ。昆虫学者の少し間が抜けたキャラクターや、姪との近親相姦的な関係といった、「普通とは違う」という感覚。エルンスト・ルビッチの後の作品に影響を与えたという指摘も納得できるし、もう少し後のスクリューボール・コメディにも近い感覚もある。

 ストーリーやテーマの先見性は確かにあるように思えるが、やはり私はこの作品自体はあまり楽しめなかった。それは、ルビッチやビリー・ワイルダープレストン・スタージェスといった、より工夫された作品を見てしまったせいなのかもしれない。