フランス印象主義派の活躍 ルイ・デリュック

 フォトジェニー論を提唱し、自らも作品で実践していたフランス印象主義派の旗手ルイ・デリュックは、マルセイユの酒場に集った30人の個人の心理ドラマである「狂熱」(1921)を発表している。

 「狂熱」(1921)の予算は少なく、デリュックは友人たちに出演してもらったという。ゴーモン撮影所での酒場のセットだけで、撮影日数も数日間だったらしい。だが、この悪条件が映画に好結果を及ぼしたとも言われる。悪条件ゆえに、1つのセットで時間順に撮影するという手法が取られ、出演者たちはすんなり役柄に入り込めたという。ちなみに、「狂熱」のもともとのタイトルは「汚辱」だったが、検閲で変更されたのだという。

 デリュックは、マーク・トウェインの短編を映画化した「雷」(1921)も監督している。「雷」は、時・場所が単一化された演劇的な作品だったと言われている。