フランス印象主義派の活躍 マルセル・レルビエ

 ルイ・デリュックと同じくフランス印象派の1人と言われるマルセル・レルビエは、探偵の登場するアメリカの連続映画のパロディーである(レルビエには笑いの感覚はあまりなかったために出来は悪いとされる)「運命荘」(1921)や、プロメテウスの神話を現代に置き換えた作品である「銀行家プロメテウス」(1921)を監督した後、「エル・ドラドオ」(1921)を監督している。

 「エル・ドラドオ」はアンダルシアを舞台に酒場の踊子の母性愛を描いた作品で、レルビエが多くの作品でコンビを組んだジャック・カトランが主演した。視覚的な美に重点を置くレルビエ独特の映像表現に、セビリアの聖週間の行列などのドキュメンタリー的映像が挿入された。レルビエは、登場人物の放心状態を表現するためにソフトフォーカスを使用した(試写のときゴーモン社のボスであるレオン・ゴーモンが映写機の故障と勘違いしたという話が残っている)。また、ラストの踊り子の自殺は影絵として表現された。この表現方法は、ドイツ表現主義でも見られるものである。

 「エル・ドラドオ」は、デリュックを始めとして批評的にも高く評価され、フランス国内ではヒットした。だが、フランス語圏以外では、ほとんど公開すらされなかったという。