その他のフランス映画 1921年

 そのほかにフランスでは、フィルムに1コマずつに色を塗っていくタイプの色彩映画「三仮面」(1921)が作られている。フランス映画初期を代表する名優アンリ・クロースが自ら監督・脚本を務め主演したドラマである。コルシカの名家の一人息子は、下女のスペランツァと恋に落ちるが、身分違いを理由に父に反対され・・・といった内容である。

 フランス映画草創期から活躍し、連続映画の名手と言われたルイ・フイヤードは「二人の少女」「孤児」「パリゼット」(1921)といったシネロマン(連続映画を「シネロマン」と名づけて公開していた)を監督している。だが、これまでのような犯罪ものではなく文学的な作品で、新人女優サンドラ・ミロワノフが柔和な表情を見せたという。

 ちなみにフランスでは、第一次大戦中に暫定的に検閲制度が導入されていたが、第一次大戦が終わった後も続けられていた。この頃には、検閲に対して反対のキャンペーンが行われるなどの動きもあった。映画監督のアベル・ガンスらが映画審査委員会に任命され、管轄が文化管理局に移るなどの変更があったが、実際には警察の管理下で行われ、フランスにおける検閲は続いていくことになる。