ソ連 レフ・クレショフと映画実験工房

 国立映画学校の教授となっていたレフ・クレショフは、才能溢れる人々を集めて「クレショフ映画実験工房」を設立している。クレショフ夫人でもある女優のアレクサンドラ・ホフーロワ、俳優から監督となったフセヴォロド・プドフキンやセルゲイ・コマーロフやレオニード・オボレンスキー、俳優のウラジミル・フォーゲリ、監督となるボリス・バルネットらが所属した。

 当時は、生フィルムが不足していたため、静止写真や短いフィルムの断片を使って、クレショフが「映画なしの映画」と呼んだ実験を行っていた。

 1921年に写真・映画部から受け取った90メートル(数分に相当)のフィルムを使って行われた実験では、別々の場所の人物ショットを連続してモンタージュすると、同一場所で出会うように見えるという「創造的地理」や、別々の人物の体部分のアップをつなぐと、実在しない女性像が誕生するという「創造的人間」といった概念を導き出した。また、同じ表情を別々の映像をつなぎ合わせることで、さまざまな感情を表現できることを発見している。この効果は、クレショフ効果と言われている。