デンマーク カール・ドライヤー「悪魔の書から」

 衰退するデンマーク映画界では、カール・ドライヤーが「悪魔の書から」(1921)を発表している。D・W・グリフィスの「イントラレンス」(1916)に影響を受けていると言われ、4つの時代におけるサタンの人間への誘惑を描いた作品である。ドライヤーは製作にあたって、ノーディスク社に対して通常をはるかに上回る製作費を要求したが、ノーディスク社は拒否した。結局は、ドライヤーが製作中止になることを恐れて、規模を縮小して完成させたという。

 「悪魔の書から」は1919年には撮影が終了していたが、1921年まで封切られなかったのにはこうした理由があったからのようだ。ちなみにドライヤーは1919年に撮影を終えた後、スウェーデンにて「牧師の未亡人」(1920)を監督しており、こちらの方が先に公開されている。