映画評「蓮華姫」

 原題「LOTUS BLOSSOM」 製作国アメリ
 ワー・ミン・モーション・ピクチャー製作 ナショナル・エクスチェンジス配給
 製作・監督・原案ジェームズ・B・ロン 出演ツェン・メイ タリー・マーシャル 阿部豊

 元々は7巻ものだったらしいが、5巻の部分(約12分)しか残っていないのだという。残っている部分は、男が女装して軍隊の司令官を油断させて暗殺するシーンや、中国人の科学者(発明家)が新たな種類の金属で何かを作ろうとしているが材料の花が足りずに、娘がそれを取りに行くといったシーンである。

 この作品はサイレント時代に作られた最初期の、そしておそらく唯一の中国人系の映画製作会社が製作した映画だと言われている。といっても、完全に中国人だけで作られたわけではなく、アメリカ人俳優のタリー・マーシャルや、日本人の阿部豊も出演している。サイレント映画は、言語の制約がなかったこともあり、この作品のように異人種を演じてもさほどの違和感がなく、頻繁に行われていた。サイレント時代ならではの特徴と言える。

 金属を完成させる謎の花を探し求めるという内容は神秘的でもあり、非科学的でもある。一目で中国人と分かる容貌や服装も含めて、中国のステレオタイプを生かした娯楽作だったのだろう。だが残念なことに、この作品を作ったプロダクションは、一作のみで消滅してしまう。監督のジェームズ・B・ロンも、以後は俳優として活躍するが、監督は一作限りだ。