映画評「寡言の男」

 製作国アメリカ 原題「THREE WORD BRAND」
 ウィリアム・S・ハート・プロダクションズ製作 フェイマス・プレイヤーズ=ラスキー・コーポレーション配給
 監督・脚本ランバートヒルヤー 製作・出演ウィリアム・S・ハート 原作ウィル・レイノルズ
 撮影ジョセフ・H・オーガスト 出演ジェーン・ノヴァク、S・J・ビンガム、ジョージ・C・ピアース

 寡黙のため「三言」というあだ名のブランドは、バートンと共に西部で牧場を営んでいた。水の権利を巡って対立した隣の牧場主たちの策略によって、バートンは殺人の濡れ衣を着せられる。狩りにやって来た知事が自分にそっくりなことを知ったブランドは、知事に成り代わって解決しようと試みる。

 ウィリアム・S・ハートの作品としては珍しい、コメディの部類に入る作品といえるだろう。アクション・スターとなる前のダグラス・フェアバンクスが演じてもしっくりくる内容である。ハートは、これまた珍しく3役を演じている。ブランドの父親、ブランド、州知事の3人である。知事に成り代わったブランドが州知事の妻のキス攻撃にあうシーンでは、いつも真面目なハートのキャラクターが生きていて、コメディ演技をしないことが逆に面白さにつながっている。

 勧善懲悪の基本ラインは変えずに、ちょっとしたストーリー上の工夫と、一人三役という変化球を加えて、魅力的な作品を送り出している。当時人気の絶頂にあったハートの余裕する感じさせる作品だ。