映画評「ハイ・サイン」

 原題「THE ‘HIGH SIGN’」 製作国アメリ
 ジョセフ・M・スケンク・プロダクションズ製作 メトロ・ピクチャーズ・コーポレーション配給
 監督・脚本エドワード・F・クライン 監督・脚本・出演バスター・キートン

 キートンはある金持ちの男性のボディガードと、男性の命を狙う暗殺者の両方で雇われてしまう。

 狂ったように回転しているメリー・ゴーランドや、1枚が折り畳まれてできている新聞など、細かいギャグは多彩で、見ていて飽きることはない。だが、最大の見所は、忍者屋敷のように仕掛けの張り巡らされたクライマックスの追いかけっこだろう。1階に2部屋、2階に2部屋の計4部屋のセットを、少し引いた位置からすべて見えるように撮影して、キートンのアクロバティックな動きが堪能できるように工夫されている。飛んだり、跳ねたり、落ちたり、転がったりといった単純な動きだが、工夫されたセットと組み合わさって、動きの魅力に満ち満ちている。

 ちなみに、この作品はキートンが単独主演するようになってから最初に製作された映画であったという。キートンは気に入らず、「文化生活1週間」(1920)を作って、単独主演第一作とした(この作品は、キートンが足の骨を折ってしまい、次作の公開が遅れたために公開された)。この作品は十分面白い。ただ、「文化生活1週間」と比較すると、少し落ちるような気もする。キートンが、「ハイ・サイン」をお蔵入りにしてまで単独主演第一作とした「文化生活1週間」は、それほどの傑作だ。ここに、単独主演となったキートンの意気込みが感じられもする。

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