映画評「ロイドの水兵」

 原題「A SAILOR MADE MAN」 製作国アメリ
 ハル・ローチ・ステュディオズ製作 アソシエイテッド・エキジビターズ配給
 監督フレッド・ニューメイヤー 製作・脚本ハル・ローチ 出演ハロルド・ロイド

 金持ちの息子ハロルドは、恋するミルドレッドに求婚する。だが、ミルドレッドの父親から、「働いていない者に娘はやれない」と言われる。海軍に入隊したハロルドは、巡航先の町で偶然にもミルドレッドと再会するも、彼女はその町の王様に誘拐されてしまう。

 それまで二巻物(約25分)の短編コメディに出演していたハロルド・ロイドによる、47分の中編である。製作者のローチとロイドは最初から長くするつもりはなかったが、中編のままで実施した試写が好評だったために、そのまま公開したという。その結果、映画はヒットし、以後ロイドは中編から長編を製作するようになっていく。

 海軍に入隊するまで、艦上での生活、巡航先の町でのドタバタの3つのパートに分かれた作品で、後半に向かっていくにしたがって、ドタバタは激しくなり、テンポは速くなっていく。また、最初は鼻持ちならない金持ちの坊ちゃんであるハロルドは、映画の後半になると愛する者のために命を賭けるナイス・ガイへと変化していく。この変化が、中編のコメディとして成功させている要因と思われる。

 記憶に残ったギャグとしては、水兵の帽子を猿に盗まれたハロルドが、レストランにおいてあるパイが帽子の形に似ているのに気づいて、パイを頭に被るくだりだ。この後、帽子を取り戻したハロルドは、被っていた帽子型のパイを食べる。横で見ていたハロルドの友人が、試しに帽子を食べて見るが、もちろん食えたもんじゃない。

 後半では、ロイドがバック宙を披露する。ロイドはチャールズ・チャップリンバスター・キートンと比べると、身体芸は目立たない。しかし、確固とした身体性の高さの下地があることを、さりげなく証明している。