映画評「落胆無用」

 原題「NEVER WEAKEN」 製作国アメリ
 ハル・ローチ・スタジオ製作 パテ・エクスチェンジ配給
 監督フレッド・C・ニューメイヤー 製作・脚本ハル・ローチ 出演ハロルド・ロイド ミルドレッド・デイヴィス

 ハロルドは隣のオフィスで働くミルドレッドに恋をしている。ミルドレッドが他の男と結婚すると勘違いしたハロルドは、自殺を決意。だが、ひょんなことから工事中の高層ビルのために吊るされた鉄骨と一緒に、足場も不確かな工事現場に連れられていく。

 序盤で、男がわざと派手に転び、ロイドが医者のフリをして直してみせるというギャグは、チャールズ・チャップリンの「キッド」(1920)を思わせる。また、自殺をしようとして毒を飲もうとするが、おいしくなさそうなのでためらったりといった自殺を巡るギャグも面白いが、この作品の最大の見せ場はなんと言っても高層ビルの工事現場でのスタントだろう。ロイドはアクロバティックな動きを見せるわけではないが、それがサスペンスを高めている。後の「要心無用」(1923)もそうだが、高さを感じさせる撮影も見事だ。

 ロイドの短編の中でも、よく出来た作品の1つと言えるだろう。だが、こうした映像を見慣れてしまったためか、ハラハラドキドキはしなかった。