映画評「LEAP YEAR」

 製作国アメリカ パラマウント・ピクチャーズ製作 フェイマス・プレイヤーズ=ラスキー配給
 監督・出演ロスコー・アーバックル 監督ジェームズ・クルーズ

 スタンリーは、会う女性みんなに求婚をしてしまうという癖を持っている。そのため3人の女性が、「自分はフィアンセだ」とスタンリーの家にやって来る。それぞれの女性の関係者もやって来て、スタンリーの家は混乱の極みに達する。

 この作品は、人気絶頂だったロスコー・アーバックルの1時間弱の長編であるが、アメリカでは公開されていない。それは、公開前にアーバックルが強姦容疑で逮捕されるという事件が起こったためである。アーバックルは後に裁判で無罪となるのだが、この作品はその後数十年間に渡ってアメリカでは公開されなかった。

 アーバックルは当時、アドルフ・ズーカーがボスのパラマウントと契約しており、短編から長編へという時代の流れにも乗り遅れることはなかった。この作品も長編の作品である。

 長編だけあって、それまでのアーバックルの作品よりもストーリーが練られているように感じられる。内容自体はそれまでのアーバックル作品の変奏ともいえ、それを3人の女性にして時間を稼いでいるとも言えなくはない。それでも、ラストの落ちはしっかりとしているし、ストーリーへの配慮が感じられる。

 ただし、アーバックル自身の魅力が長編になって増大しているかというと、少し疑問だ。ストーリーに見られる計算は、アーバックルの豪快な魅力を削いでいるようにも感じられる。

 アーバックルの長編への挑戦は始まったばかりだった。この作品自体は、中の上程度の出来と言っていいだろう。残念なのは、アーバックルのキャリアは事実上、この作品で終わってしまったことだ。