映画評「好機逸すべからず」

 原題「NOW OR NEVER」 製作国アメリ
 ローリン・フィルムス製作 パテ・エクスチェンジ配給
 監督・製作ハル・ローチ 監督フレッド・C・ニューメイヤー 出演ハロルド・ロイド ミルドレッド・デイヴィス

 ロイドとミルドレッドは幼馴染で、大きくなったら結婚する約束をしている。2人は約束を果たして列車で旅行に出かける。だが、ミルドレッドがメイドとして働いている先の小さな女の子をミルドレッドが連れてきたため、その後の列車の旅はその女の子に振り回されることになる。

 この頃のハロルド・ロイドは、短編から中篇へと舞台を移していた。この作品も、40分程度の中篇である。映画が長くなれば、ストーリーが大事になってくる。この作品もストーリーが工夫されている。

 工夫の最大のものは、少女の存在だ。似たようなストーリーが多い短編コメディとは異なり、少女がハロルドを振り回すという軸によって、他のコメディとの差別化を図ろうとしている。チャールズ・チャップリンの「キッド」(1920)のパクりだと言われればそれまでだが、「キッド」にあった人情的な要素ではなく、コメディとしての面白さを押し出すために使われているという点で、ロイドらしいカラっとした作品にフィットしていると思う。その他にも、列車内で出会う多くの人々との絡みは、寝台列車による移動という特徴を生かしている。

 列車による旅行、子供に振り回される男性・・・こうした設定が今の映画でも多く使われているものであることを思い起こしてほしい。そうすれば、この作品の親しみやすさの秘密と、先見性の高さが分かるだろう。