映画評「LA TERRE」

 製作国フランス 監督アンドレ・アントワーヌ 原作エミール・ゾラ

 農民のペーレは年老いたこともあり、所有している土地を娘たちに分割する。だが、財産を贈与してしまってから、子供たちはペーレに冷たくあたるようになってしまう。

 エミール・ゾラ原作「大地」の映画化作品である。監督のアンドレ・アントワーヌは、自然主義を提唱したフランス演劇界の重鎮であり、当時映画にも進出していた。

 アントワーヌはロケでフランスの農村地帯で撮影を行い、役者の演技も自然的なものを求めており、その結果がこの作品には見られる。だが、決して自然主義そのものが、映画を面白くするとは限らない。この作品は、ウィリアム・シェイクスピアの「リア王」を下敷きにした、複雑で多層的なストーリーを追うことで汲々としてしまっているように思える。他の土地からやってきたジャンと、ペーレの最も若くて美しい娘フランソワーズの恋愛といったエピソードも、サブ・プロットとしての機能しか果たしておらず、ドラマにまで昇華されていない。

 とはいえ、ラストの畳みかけるようなシークエンスは見事だ。快活な若い女性が朝を迎える一方、ペーレは雪の降る中で孤独に死んでいく。ショットの美しさといい、ショットのつなぎ方から生まれるリズムといい、印象に残るものとなっている。

 アントワーヌの映画における自然主義の試みは失敗に終わったと言われる。アントワーヌの作品は、この作品しか見たことがないが、確かに頷けるものがある。アントワーヌは、自然の風景を使った、自然な演技による映画を目指して、そこには成功している。だが、自然主義とかそういったことを抜きにして、1本の作品として魅力的な映画を作り上げることには、決して成功しているようには思えない。

La Terre [VHS] [Import]

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