映画評「L’UOMO MECCANICO」

 製作国イタリア 英語題「THE MECHANICAL MAN」 ミラノ・フィルム製作・配給
 監督・脚本・出演アンドレ・デード

 アンドレ・デードは、1910年代の初めからフランスやイタリアで活躍したコメディアンである。短編コメディを多く監督し、世界で初めてスターとなった人物とも言われている。そのデードが、イタリアで最初期のSF映画を監督・主演していたことは知らなかった。驚きである。この作品は、長年失われていたと思われていたが、ブラジルでフィルムが発見されたという。だが、全体の40%しか残っていないと言われる。私が見たDVDでは、失われた部分も理解できるように、冒頭でストーリー全体が字幕で解説されていた。

 悪の組織のボス(女性)は、科学者が発明したメカニル・マン(機械人間)を使って、悪事を働いている。メカニル・マンを倒すために、もう1体のメカニル・マンを作られ、2体は対決する。

 ストーリーを読んでわかるとおり、話はどうでもよい。「レ・ヴァンピール」(1915)などの連続映画を思わせる荒唐無稽なもので、非現実的なメカニル・マンを登場させるにはこういった内容しかないと思われる。

 登場するメカニル・マンは、かなりしょぼい。世界で初めて映画にロボットを登場させたという「人間タンク」(1920)にも共通することだが、人間が中に入って動かす必要があるため、造形はおのずと制限されてしまうのだ。それを考慮に入れても、「人間タンク」のロボットとこの作品のメカニル・マンは似ている。製作順で考えると、デードが真似をした可能性も高い。ちなみにメカニル・マンは、DVDのパッケージでは人間の3倍くらいの大きさに描かれているが、映画内では1.2倍くらいだ。

 見た目はしょぼいが、メカニル・マンには愛嬌がある。仮装パーティに入り込んだメカニル・マンは、パーティの出席者たちから誰かの仮装と間違われて喝采を受ける。その時の喝采にお辞儀をして答える姿や、その後のシャンパンを女性についだり、しまいには女性の背中に腕を回したりする姿は楽しい。

 ラストには、2体のメカニル・マン同士による対決が待っている。これがまた、しょぼい。紙相撲のようにお互いに抱きついて手を振り回すだけだ。しかし、互いにダメージを与えているらしく、火花が散る。

 キッチュなメカニル・マンの造形の魅力。それが、この作品のすべてだろう。だから、発見されたフィルムが40%しかなくとも、それがメカニル・マンの登場するシーンであったということは喜ばしいことなのかもしれない。