ルドルフ・ヴァレンティノと「血と砂」

 パラマウントの黄金期を支えるスターの1人となったルドルフ・ヴァレンティノは、「血と砂」(1922)で、美しい衣装に身を包んだ闘牛士を演じている。愛妻がいながらニタ・ナルディ扮するほかの女性の色香に惑わされ、転落していく男を熱演し、女性ファンを喜ばせた。

 スペインの作家であるヴィセンテ・ブラスコ=イバニェスの小説を、ヴァレンティノを見出したと言われる脚本家のジューン・マシスが、1921年にニューヨークで舞台化したときの戯曲を元に脚色している。原作には体制批判の要素があったが、あくまでもスター中心の娯楽作となっている。監督フレッド・ニブロは、ヴァレンティノの美しさを余すところなく引き出している。ちなみに、ファンの抗議を恐れて、闘牛の角に突かれて絶命しカルメンの腕の中で死んでいくラストと、ヴァレンティノが死なずに済むハッピーエンドの2バージョンを用意したという。日本では死ぬバージョンが公開された。


映画評「血と砂」


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