西部劇スター トム・ミックスの魅力

 1920年に入ってから人気が下降した西部劇ドラマのスターのウィリアム・S・ハートと入れ替わるようにして、1910年代から西部劇に出演していたトム・ミックスが、西部劇スターとして人気を爆発させていた。また、同時にミックス自身の愛馬「トニー」もミックスに劣らない人気を得た。

 ミックスは演技力がないことを自覚しており、悪者を倒してヒロインを助ける単純なヒーローを演じ続けた。そのため、恋愛はあまり強調されなかったが、アクロバティックな妙技とユーモアに満ちた作品が作られたという。また、演技力がないため、クロース・アップは滅多に見られず、動きの全貌を捉えるためにロングに引かれて撮影されることが多かったという。見せ場のアクション・シーンでは自分が演じていることを見せるために、カットを割らなかったと言われている。

 ミックスが演じるヒーローは、本当のカウボーイが着る服とは異なる派手な服装をしていた。ミックスが着用した高価なブーツやネームを縫い取った絹のシャツは、かつての本当のカウボーイの願望が反映されていると言われている。