映画評「海のモーラン」
原題「MORAN OF THE LADY LETTY」 製作国アメリカ
フェイマス・プレイヤーズ=ラスキー製作
パラマウント・ピクチャーズ、フェイマス・プレイヤーズ=ラスキー配給
監督・製作ジョージ・メルフォード 原作フランク・ノリス 出演ルドルフ・ヴァレンティノ、ドロシー・ダルトン
上流階級の生活に嫌気が差しているラモンは誘拐され、悪漢キッチェルが船長をしている船へ連れていかれる。船乗りとして才能を発揮するラモンを乗せた船は、海上である船と遭遇する。船に乗り込んだラモンは大量の死体を発見するが、唯一の生き残りの女性モーランを助けだす。
「黙示録の四騎士」「シーク」(1921)で、セクシーなスターとしての人気を確立したヴァレンティノが「シーク」に続いて出演した作品である。女性に恋をして、女性の心をゲットするという役割は同じだが、あまりセックス・アピールは強調されていない。ラモンとモーランの関係も、最終的は男女の関係になるのだが、モーランが海で育てられたボーイッシュな女性ということもあり、通常の男女のメロドラマのような盛り上がりは見せない。それよりも、上流階級に飽きたラモンと、男勝りのモーランという、元々いた世界に居心地の悪さを感じていた2人の魂の交流という側面が強い。
船乗りとしてのヴァレンティノは、荒くれ者と交じって、これまでにないたくましさを見せる。シャツから除く腕は筋肉質だし、堂々としたケンカぶりも見せる。
魂の交流もたくましさも、他の作品に見るヴァレンティノにはない側面だ。だが、その両者とも、うまく表現されているかというと、疑問だ。それは、ヴァレンティノのためというよりは、平板なストーリーや演出にあるような気がする。
恋愛が前面に出ていないこともあり、「海のモーラン」は興行的に良くはなかったらしい。人々がヴァレンティノに求めていたものが、ここにはなかったということだろうが、それ以上に作品の出来があまり良いのが原因なのではないかと個人的には思う。
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