映画評「船に打ち乗り海原指して」

 製作国アメリカ 原題「DOWN TO THE SEA IN SHIPS
 ホエーリング・フィルム・コープ製作 W・W・ホジキンソン配給
 監督・製作エルマー・クリフトン 脚本ジョン・L・E・ペル 出演マーゲリット・クールトウ、クララ・ボウ

 ニューイングランドにある、捕鯨で生きるクエーカー教徒たちの港町を舞台に、ロマンスと捕鯨のアクションが展開される。

 製作会社の社名にある通り、捕鯨シーンに力を入れた作品である(残念ながら、この作品を製作しただけで姿を消す)。冒頭で、危険を顧みずに撮影したカメラマンを称える文章が紹介されるほど、実際に海に出て捕鯨の様子を撮影したシーンは迫力があるとともに、貴重な資料でもあると言えるだろう。

 捕鯨と共に展開されるロマンス自体は、ありふれたものだし、これといった工夫はされていない。だが、クエーカー教徒か否かを、娘の結婚相手として大きな判断材料とするヒロインの父に代表される、クエーカー教徒たちの堅い絆や意識が特徴的だ。

 この作品は、クララ・ボウが注目を集めた作品としても知られている。公開当時16歳だったボウは、ほぼノーメイクと思われることもあり、非常に幼い。後の作品と比べると、メイクアップの影響の凄さを感じる。

 ボウを目当てで見ると落胆するかもしれない。それも仕方がない。この作品は、製作会社の社名に入れるほど捕鯨の様子を撮影しようという意思が感じられる作品だからだ。モリを使ってのアクション溢れる捕鯨シーン、捕まえた捕鯨の解体シーンなど、最大の見どころはボウ以外にある。


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