映画評「太古の恋人」

 製作国アメリカ 原題「THE PRIMITIVE LOVER」
 コンスタンス・タルマッジ・フィルム・カンパニー製作
 アソシエイテッド・ファースト・ナショナル・ピクチャーズ配給
 監督シドニー・フランクリン 製作ジョセフ・M・スケンク 原作エドガー・セルウィン 脚本フランセス・マリオン
 出演コンスタンス・タルマッジ、ハリソン・フォード、ケネス・ハーラン、ジョー・ロバーツ、チャールズ・ピナ

 当時人気のあったコメディエンヌのコンスタンス・タルマッジ主演作。自身の名を冠した製作会社が製作にあたっていることからも、当時の人気ぶりが伝わって来る。

 ロマンチックな生活に憧れるフィリスは、夫のヘクターがつまらないことにイライラしている。そこに、死んだと思っていた、かつての恋人でロマンス小説家のドナルドが戻って来る。ヘクターはドナルドが生きていることを知っていたが、フィリスに伝えずに結婚したのだった。フィリスは早速離婚してドナルドと結婚しようとする。

 今では知られざる作品で、内容的には他愛もないものと言い切ってしまって良い。軽いコメディとしては見事に作られている。

 後に偉大な脚本家として名を馳せるフランセス・マリオンの脚本が見事だ。海にポツンと浮かぶイカダで始まるオープニングのインパクトは強い。そこで繰り広げられる大げさな自己犠牲のドラマは、それを好むタルマッジ演じるフィリスが憧れるもので、後の展開に活きてくる。その後も、フィリスの前では鼻の下を伸ばす保安官や、気のいいネイティブ・アメリカンなど、脇役のキャラも立っている。マリオンの才能が、あちこちに散りばめられている。

 快活なタルマッジもいい。ロマンスに過剰に憧れる愚かさ、巨漢の荒くれ男にも真っ向から立ち向かう気の強さなど、魅力がいっぱいだ。

 内容的にはどうでも良い作品だ。だが、たまには当時としては上級の娯楽作を楽しむのも悪くないだろう。