映画評「ロビン・フッド」

 製作国アメリカ 原題「ROBIN HOOD
 ダグラス・フェアバンクス・ピクチャーズ製作 ユナイテッド・アーティスツ配給
 監督アラン・ドワン 製作・脚本・出演ダグラス・フェアバンクス 撮影アーサー・エディソン
 出演ウォーレス・ビアリー、サム・ド・グラッス、エニッド・ベネット、アラン・ヘイル、ウィラード・ルイス

 ロビン・フッドの伝説を題材に、フェアバンクス自身が原案を提供(エルトン・トーマス名義)して製作された作品。この頃のフェアバンクスは歴史物に力を入れていたが、「ロビン・フッド」では当時最高の製作費140万ドルをかけて、大人数のエキストラによる壮大なモブ・シーンや巨大な城の再現などを実現している。

 多くの作品と同じように、フェアバンクスは快活で軽やかな主人公を演じている。身分を隠してロビン・フッドと名乗り、敬愛するリチャード王が十字軍遠征に出ている隙に、王の座を奪おうとたくらむリチャードの弟ジョンがいる城に乗り込み、兵士たちの攻撃を巧みにかわしながら的確に矢を放つ一連のアクション・シーン。この軽やかさはフェアバンクスならではのものだ。このシーンでは、かなりの高さから巨大なカーテンを伝って下に降りるという楽しいショットもある。

 後半にも、せり上がる跳ね橋の先にしがみついて城に潜入するシーンなど随所に見どころはあるものの、どこか物足りない。何が足りないかというと、フェアバンクス自身の魅力に溢れたシーンが少ないのだ。145分とフェアバンクスの作品の中でも長尺にあたる「ロビン・フッド」は、多額の製作費からも分かるように、多くの魅力がある。巨大なセット、豪華な衣装、大人数のエキストラを使ったモブ・シーンなど。それらはすべて素晴らしいのだが、メインにはならない。メインはやはり、フェアバンクスのはずだ。

 フェアバンクスはこれまでと同じように魅力的だ。だが、多くの他の要素によって、その魅力は薄められている。フェアバンクスは多額の製作費によって、苦しめられていく。おそらくフェアバンクスは多額の製作費をかけない作品でも(もしかしたらその方が)、楽しい作品を生み出せたはずだ。だが、そうはできないところに、「スター兼製作者」のエゴと苦悩があるのかもしれない。

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