映画評「影に怯へて」

 製作国アメリカ 原題「SHADOWS」
 B・P・シュルバーグ・プロダクションズ アル・リヒトマン・コーポレーション配給
 監督トム・フォーマン 原作ウィルバー・ダニエル・スティール 脚本イヴ・アンセル、ホープ・ローリング
 撮影ハリー・ペリー 出演ロン・チェイニー、マーガレット・ド・ラ・モット、ハリソン・フォード

 ある港町にやって来た牧師と中国人。牧師は港町の未亡人と結婚して子供を儲けるが、死んだと思っていた未亡人の夫が生きていることを知る。一方、中国人は牧師からキリスト教への改宗を勧められるが、首を縦に振らない。

 キリスト教とはどのような宗教かということを、真摯に描こうとした作品である。主人公の牧師は、自分の人生を台無しにしようとした男を許す。その様子を見た中国人は、キリスト教への改宗を決意するという展開となっている。

 宗教的観点から見ると素晴らしい作品かもしれないが、物語は盛り上がりに欠ける。中国人を演じるチェイニーの見事な演技を始め、登場人物たちはみなきっちりとした演技を見せている。だが、「きっちりとした」以上のものは感じられなかった。マーガレット・ド・ラ・モット演じる未亡人には白い服を着せて、他の登場人物たちよりも際立つような工夫がされていたりするものの、演出は全体的に平板だ。

 真面目な映画である。1920年代に限らず、キリスト教的な側面は多くのアメリカ映画に見られるものだが、それがどういったものかを懇切丁寧に教えてくれる。それだけでも価値はあるのだと思う。だが、物足りない。