映画評「血と肉」

 製作国アメリカ 原題「FLESH AND BLOOD」
 アーヴィング・カミングス・プロダクションズ製作
 ウェスタン・ピクチャーズ・エクスプロイテーション・カンパニー配給
 監督・製作アーヴィング・カミングス 脚本ルイス・D・ライトン 出演ロン・チェイニー、エディス・ロバーツ

 脱獄したデイヴィッドは、友人であるチャイナタウンのボスの元に身を隠す。彼は無実の罪で投獄されていたのだが、妻の死が近いことを知り脱獄したのだった。結局、妻の死には間に合わなかったが、自分のことを死んだと思っている娘が教会で働いていることを知り、足が不自由なフリをして会いに行く。

 非常に渋い作品である。チャイナタウンのエキゾチズム、チェイニーの足の不自由な演技といった面を考慮に入れても、やはり渋い。無実の罪で投獄された男が、愛する娘の幸せを願う一方で、自らを投獄した男へ復讐を狙う。演出も奇をてらっておらず、真っ直ぐだ。渋い。

 大きな感動を呼ぶ作品ではないかもしれない。だが、非常に堅実で、非常に真摯な作品だ。チェイニーというと、「オペラの怪人」(1925)や「ノートルダムのせむし男」(1923)のような、メイクアップを駆使した役柄の方が有名だ。だが、一方で堅実な演技を見事のこなすことが、そしてそんなチェイニーが主演する渋い作品が製作される土壌があったことを、「血と肉」は証明している。