映画評「シャーロック・ホームズ」

 製作国アメリカ 原題「SHERLOCK HOLMES」 ゴールドウィン・ピクチャーズ・コーポレーション製作・配給
 監督アルバート・パーカー 原作アーサー・コナン・ドイル、ウィリアム・ジレット
 脚本アール・ブラウン、マリオン・フェアファックス 出演ジョン・バリモア、キャロル・デンプスター

 コナン・ドイル原作を基にした舞台を映画化した作品。バリモア演じるホームズと、悪の組織のボスである森アーティ教授の攻防を描く。ウィリアム・パウエルの映画デビュー作でもある。

 残念ながら、正直つまらない作品だった。内容の性質上仕方がないのかもしれないが、字幕が非常に多く動きに欠ける。内容自体も、工夫されているとは言えず、退屈だった。バリモアが演じるホームズはロマンチックな部分も持っているのが新鮮だが、強烈な印象を残しているとは言い難い。

 演出も今一つという点で象徴的なのが、学生時代のホームズが初めて登場するシーンだ。田舎の小道を、1人の男がゆっくりと通り過ぎたかと思うと、画面の右下に座っていたホームズが動き出す。恐らく、ほとんどの人はこのシーンを見て、通り過ぎる男に目が行き、ホームズについては動き出すまで気づかないだろう。通り過ぎる男は何も重要性を持たないし、ホームズに気付かないことが何かに結び付くわけでもないのだ。主役の登場なのに、これほど地味なものはない。

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