映画評「天空万里」

 製作国アメリカ 原題「SKY HIGH」 フィックス・フィルム・コーポレーション製作・配給
 監督・脚本リン・レイノルズ 出演トム・ミックス、J・ファレル・マクドナルド、エヴァ・ノヴァク

 舞台はグランド・キャニオン。メキシコからの密入国者を取り締まっているグラントは、悪漢たちに捕えられた娘エステルを、馬や飛行機を駆使して救い出す。

 カウボーイ役として人気を得たトム・ミックス主演作。同じく西部劇スターとして1910年代を中心に活躍したウィリアム・S・ハート主演作と比べて、人間ドラマを目指さずに、とにかくアクション映画としての楽しさを中心に据えている。

 私が最も感心したのは、こちらの崖から向こうの崖に飛び移るちょっとしたシーン。ちょっとしたジャンプなのだが、ちょっとでも足を踏み外せば、谷底に落ちてしまうこのシーンを、ミックスは自ら演じている。もちろん、安全策は取られていると思われるが、それでも緊張感のあるシーンだった。飛行機を使った大掛かりなシーンと比べると地味だが、緊張感ではこちらが上だ。

 後年作られたアクション映画と比べると、迫力などの点では見劣りするものの、明るく、朗らかで、真っ直ぐなミックス西部劇の魅力が詰まった作品である。


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