映画評「氷原より激流へ」

 製作国アメリカ 英語題「THE MAN FROM BEYOND」 フーディーニ・ピクチャー・コーポレーション製作・配給
 監督バートン・L・キング 製作総指揮・原案・出演ハリー・フーディーニ 脚本クーリッジ・ストリーター

 奇術師として有名で、映画にも進出していたフーディーニが、自身のプロダクションで製作した作品。極地で氷漬けになった男が100年ぶりに解凍されて甦り、かつて愛した女性に似た女性を見つけて、生まれ変わりと信じ込むという内容の作品である。

 母親の死以後、霊の存在を信じていたというフーディーニの個性溢れる作品である。氷漬けになっていた男が甦るという設定は、当時においてはコメディ以外ではあり得ないものだっただろう。それを、フーディーニは真面目に真っ向から立ち向かっている。自身の映画会社で製作を行ったからこそ可能な内容とも言え、その意味では非常に貴重な映画だ。

 映画の作りは、決して優れているとは言えない。ラストのナイアガラの滝を舞台にしたアクションは多少迫力があるが、それ以外はアクションもエモーションも感じられなかった。

 それでも、フーディーニという稀代の奇術師が、映画において表現したかったものは、痛いほど伝わって来る。この作品を製作して満足したのか、フーディーニはこの後1作だけに出演して映画からは退くことになる。


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