映画評「嵐の国のテス」

 製作国アメリカ 原題「TESS OF THE STORM COUNTRY」
 メアリー・ピックフォード・カンパニー製作 ユナイテッド・アーティスツ配給
 監督ジョン・S・ロバートソン 製作・出演メアリー・ピックフォード 原作グレイス・ミラー・ホワイト
 撮影チャールズ・ロッシャー 出演ロイド・ヒューズ、グロリア・ホープ、デヴィッド・トレンス

 金持ちのエリアス・グレイヴスは丘の上の美しい邸宅を買い、近くの湖畔に住む貧しい漁師たちを追い払おうとするのだが・・・。1914年にもピックフォードが主演して映画化された作品のリメイクである。

 当時人気絶頂期にあったピックフォードが主演した作品で、当時30歳だったピックフォードはティーンエイジャーと思われる少女役を演じている。完成された少女の演技は、時に快活に、時に悲哀に満ち、時に慈悲に溢れる。まさに名人芸である。物を蹴る時の格好から、クロース・アップで撮影された時の喜怒哀楽の表情など、スクリーンでどのように映し出されるかを熟知し尽くしたかのような演技を見せる。

 「自らを愛するように、汝の隣人を愛せよ」というキリスト教の教訓を、そのまま映画にしたような内容だ。ピックフォードの存在がなければ、退屈な映画という感想しか持たなかったかもしれない。それほど、ピックフォードは素晴らしい存在感を持った、素晴らしい演技力を持った女優である。


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