映画評「ゼンダ城の虜」

 製作国アメリカ 原題「THE PRISONER OF ZENDA」 メトロ・ピクチャーズ・コーポレーション製作・配給
 監督・製作レックス・イングラム 原作アンソニー・ホープ 脚本メアリー・オハラ 撮影ジョン・F・ハイツ
 編集グラント・ワイトック 美術アモス・マイヤーズ
 出演ルイス・ストーン、アリス・テリー、エドワード・コネリー、ロバート・エディソン、スチュアート・ホームズ
 ラモン・ノヴァロ、バーバラ・ラ・マー

 ルリタニア王国の王位戴冠式を見学に出かけたイギリス人のラッセンディル男爵は、ルドルフ王とそっくりなことから、戴冠式前日にルドルフ王と晩餐を共にする。だが、自らも王位を狙うルドルフ王の義理の息子ミヒャエルの策略で、王は毒を盛られて意識不明に。そっくりなラッセンディルは、急遽王の身代わりとなる。

 冒険小説の古典とも言われる原作は、後にロナルド・コールマン主演版を始め、多くの映像作品の元となったものだ。この作品は、サイレント版である。

 多くの作品で脇役を演じたルイス・ストーンが、主演のラッセンディルとルドルフ王の2役を渋く演じている。原作では青年という設定らしいが、どう見ても青年には見えない。だが、上品な紳士ぶりは、アリス・テリー演じるフラビア姫が惚れるに十分な気品とハンサムぶりをみせてくれる。それほど多くないアクションでも、左手を腰に持っていく騎士道スタイルが堂に入っている。

 レックス・イングラムが、ラモン・ノヴァロを見い出して出演させた作品としても知られる(クレジットはラモン・サマニヤゴ)が、ルイス・ストーンの魅力が満開の作品である。戴冠式での豪壮な大聖堂などの見事なセットも、ストーンの気高さをさらに高めている。

 字幕でも説明が多い気もするが、複雑なストーリーを展開する上ではやむを得ないとも思える。と思わせるほど、「ゼンダ城の虜」のストーンは魅力的だ。

 ストーンを褒め過ぎかもしれない。だが、他の作品でもいぶし銀の渋さを見せるストーンを大作に主役に据えた制作陣の心意気を感じ、そしてストーンの魅力を最大限引き出しているのを見ると、「ゼンダ城の虜」は見ていて嬉しくなる作品なのだ。