映画評「警官騒動」

 製作国アメリカ 原題「COPS」
 ジョセフ・M・スケンク・プロダクションズ製作 アソシエイテッド・ファースト・ナショナル・ピクチャーズ配給
 監督・脚本・出演バスター・キートン 監督・脚本エドワード・F・クライン ジョー・ロバーツ、ヴァージニア・フォックス

 馬に乗ったキートンが警官のパレードに紛れ込んでしまい、爆弾テロの犯人と間違われ、何百人もの警官たちに追われるはめになる。

 キートンを追う警官たちの数がすごい。後の「ブルース・ブラザース」(1980)を思わせる莫大な数の警官たちの姿は、過剰なものはただそれだけで面白いことを教えてくれる。マック・セネットは、「警官騒動」の10年近く前から、間抜けな警官たちによるドタバタ「キーストン・コップス」をコメディの材料としていたが、それとは面白さの質が少し違う。「警官騒動」の警官たちは決して間抜けではなく、全力でキートンを追っており、その絶望的なまでのシチュエーションにも関わらず、キートンが何百人もの警官たちをさらりさらりとかわして見せるところが「警官騒動」の最大の見せ場となっている。この警官の洪水のおもしろさは、実際に映画を見るしかないだろう。

 付け加えるべきは、警官のパレードにキートンが参加することで、何百人にも及ぶ警官にキートンが追われるというシチュエーションが正当化されている点だろう。ストーリーにも配慮がされている証拠だ。

 そのほかにも「警官騒動」には誤解が誤解を呼ぶ連鎖ギャグや、キートンお得意の小道具を使ったギャグ(言うことを聞かない馬に、ヘッドホンをさせて命令をすると動き出すというギャグなど)に、キートン一流のアクロバティックなギャグ(今回は塀とハシゴを使って見せる)もある。

 とはいえ、「警官騒動」を最も特徴付けているのは、何百人もの警官たちであることは間違いない。シチュエーションの面白さも加わり、「警官騒動」はキートンの短編の中でも独自の光を放っている。

 ちなみに、私が見たDVDのオープニングには「錠前も愛には勝てない」という、縄抜けを得意とした奇術師フーディーニの言葉が紹介される。フーディーニは「バスター」というファースト・ネームの名付け親といわれている。



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