映画評「THE SAWMILL」

 製作国アメリ
 ラリー・シーモン・プロダクションズ製作 ヴァイタグラフ・カンパニー・オブ・アメリカ製作・配給
 監督・製作総指揮・脚本・出演ラリー・シーモン 監督・脚本ノーマン・タウログ 出演オリヴァー・ハーディ

 山の中の森林伐採工場で働くラリー。現場監督や同僚、工場のオーナーらとドタバタを繰り広げる。

 短編サイレント・コメディとしては記録的な金をかけて製作された作品だという。確かに、電動ノコギリを組み込んだ装置や、大規模な爆発シーンなど金がかかっているのが感じられる。

 シーモンの作品のストーリーは、びっくりするくらい同じようなものが多い。シーモンはどこかで働いていて、シーモンの親分は悪いやつ。親分はオーナーの金を盗んだりしようとするが、ドタバタの末に結局シーモンがそれを助けることになる。それが、ホテルだったり、パン屋だったり、森林伐採工場だったりと場所が変えられている。

 この作品も同じ内容だし、同じようなドタバタなのだが、さすがに金をかけた分だけスケールが大きい。巨大な木がラリーのすぐ後ろに倒れたり、小屋を押しつぶしたりといった、森林伐採工場ならではのスタントも見られる。また、木材をカットするようの巨大な電動ノコギリが、ラリーを切断しそうになるシーンも見事だ。

 思わず声を上げて笑ってしまったのが、悪者が金庫を爆破しようとしてダイナマイトを仕掛けるシーン。あまりにも量が多すぎて、小屋ごと吹っ飛んでしまうのだ。ここでは、ショットとショットのつなぎと間が絶妙だった。

 シーモンの作品は、殴ったり蹴ったりといったスラップスティックのレベルを超えたスケールが魅力的だ。後年のアクション・コメディの始祖がここにいる。逆に言うと、どの作品もそれなりに面白いのだが、これといった記憶に残る作品がないのも確かだ。