映画評「恋の睡蓮」

 製作国アメリカ 原題「THE TOLL OF THE SEA」
 テクニカラー・モーション・ピクチャー・コーポレーション製作 メトロ・ピクチャーズ・コーポレーション配給
 監督チェスター・M・フランクリン 脚本フランセス・マリオン 出演アンナ・メイ・ウォング、ケネス・ハーラン

 世界初の2色式テクニカラー方式で撮影されたカラー長編作品である。当時多くのカラー作品が試みられたが、初めて通常のプロジェクターでも上映可能な方式で撮影された点が画期的だった。ストーリーはフランセス・マリオンが担当し、「蝶々夫人」を翻案したものとなっている。また、それまでは白人が演じることが多かったアジア人(中国人)役を、チャイナタウンで育ったアンナ・メイ・ウォングが演じた点も、当時としては異色だった。ウォングの演技は高く評価されている。

 赤と緑の二原色カラーで作られていることから、ウォングが演じる中国人の娘の衣装の配色を赤と緑を中心とするなど、技術の限界と観客の見やすさを考慮に入れた作りとなっている。

 この作品はサイレント映画である。カラーのサイレント映画は本数が少なく、そのためもあって最後まで違和感があった。色彩が現実に近いにも関わらず、映像はサイレントの技法だったためかもしれないし、ただ見慣れないためだったからかもしれない。